高校から家までは徒歩15分と近く、あっという間に家に着いてしまった。

「ただいま…」

私は小さな声で呟いた。

「…」

誰からの返事もない。

リビングへ行くと、黙ったままキッチンで食材を切っている母親と、無表情で新聞を読んでいる父親の姿が見えた。

二人とも、私に「おかえり」とは言わない。
二人の間にも、会話は存在しない。

私の家族は、もうずっと会話をしていない。

全てはあの日から…。

私が、本命の高校に落ちたときからだ。

私が受験に落ちたのを、母親は父親が私に勉強しろと言わなかったせいだと言い、

父親は母親が無理矢理塾に行かせたストレスが原因だと言った。