まん丸い目が、三日月みたいな目になって微笑んでくれて、いつもの明るい口調で話しかけてくれる。

「凄いぞ、あのオーナー。俺が男だからか、院長のプライベートを知ってるとでも思ってるんじゃないのか」
「どうしましたか?」

「院長のこと、いろいろ立ち入ったことまで聞かれた。がんがん攻めてきた」
「海知先生は話しやすいから、よけいにですね」

「税務署の調査員かと思ったよ。頻繁に来てるの?」
「ええ、皆勤賞に手が届きそうです」

「香さんと川瀬は大変だな、お疲れさん」
 海知先生は、惜しみなく労いの言葉をかけてくれる。

「池峰さんは、院長目当てなんですかね」
「俺が思うに、さっきの感じだと」

「言われてみれば、なにかしら用事をつけては来院してます。爪切りみたいに、院長が診察しなくていいときは、とてもがっかりしていました」

「オーナーなら、自分の子が病院とは無縁が嬉しいもんな」

「はい。あと毎日ドッグフードやおやつを買いに来て、首を伸ばして受付から診察室側をキョロキョロしたり」

「買いに来るだけなのも、院長に会う口実なんだろうな」

「動物も、ほかのオーナーも私たちも、なにか迷惑をかけられてる訳じゃないですからね」
 大きなため息が出る。

「これ以上、エスカレートしなきゃいいな」
「ええ、しばらく様子見です」
 池峰さんには振り回されそう。池峰さんで始まったような午前中。

 午後にやって来た急患も、助けたい使命感が強い海知先生だから、無事に乗り切ってくれた。