しゃがんでいる院長に優しさをねだるように、お尻からすり寄り、まとわりついて甘えて離れないドゥドゥの姿が目に飛び込んできた。

「ドゥドゥちゃん、あなた相当な甘えん坊さんね。はちゃめちゃで底抜けに明るいし」

 思わず込み上げてくる笑いが抑えられない。

「毎回毎回うっとうしいほど、ドゥドゥがじゃれついても、先生はいつもにこにこして遊んでくれるんです。ありがたいです」

 院長も心底、動物が大好きだもんね。

 ドゥドゥが満足して落ち着くまで、存分に遊んであげて立ち上がる院長を、名残惜しそうにドゥドゥが見上げる。

「さてとドゥドゥ、先に体重を測ろうか」

 院長の声に中腰から二人で息を合わせて抱き上げ、診察台にドゥドゥを乗せた。

 腕と腰がびっくりしそうなほど重い。

「ドゥドゥ、あんなに小さかったのに、こんなに立派に成長して、先生嬉しいよ」

 院長が顔をくしゃくしゃに崩しながら笑う。

 わかるわかる、子犬時代から知っていると、よけいに思い入れがあるの。

「順調に、すくすくと育っていて平均体重ですね。夏に落ちていた食欲が回復するから、ごはんのあげすぎに注意してください。太らせないようにしていきましょう」

 そう言った院長が、触診しながら骨格や脂肪を確かめている。

 次に聴診器を胸部に当てて、腹部へと移動させる。

「心音、呼吸、内臓も異常なし。お口の中を見せてね」

 本当に、この子おとなしい。

 黙って口を開けて唇をめくられて、院長にされるがまま。

「ドゥドゥ、今日もいい子だね。お口を見せてくれて、ありがとう。次は、お耳を見せてね」

 耳の中や肉球や目を診ているあいだも、おとなしい。

 院長が、ちらりと視線を合わせてきたから保定をする。

「ドゥドゥちゃん、いい子できるのね、凄いなあ」

 アル綿の匂いが鼻と喉の奥まで熱くする。

「ちくんするよ、ごめんね。ちょっと我慢してね、すぐだからね」

 院長がかける言葉の途中で、あっという間に注射完了。
 なにをされても平気なんだ。

「ドゥドゥ、今、先生注射したんだよ? 相変わらずデンと構えて、微動だにしないで偉いな」

 院長が少し笑い声の交じった声で褒める。

「いい? ドゥドゥちゃん、ワクチンを打ったあとは安静にしていて。おとなしくね。院長の言うこと聞けるよね、ドゥドゥちゃんはいい子だもんね」

 ゆっくりとドゥドゥを床に下ろした。

 持ち上げるよりも下ろすほうが筋肉を使うし、ゆっくり下ろさないといけないから重い。

 重くて腕が震えた。

 シャンプーや激しい運動は避けて、接種後の一週間ほどは、旅行とかの遠出は控えるようにって、院長が説明している。

「副作用が出るかもしれません。寄り道はしないで、まっすぐ帰宅して安静にさせてください。お部屋の中でも遊びは誘わないで、おとなしくですよ」

 院長は微笑みながらも、ドゥドゥの遊び好きで陽気な性格を気にかけて安静にと何度もオーナーに念を押す。