「知らない」
知らないで呼んでいたの? アバウトさに吹き出した。ママのフレンドリーな性格が羨ましい。
「いつも毬の面倒を見てくれて、毬もなついてて後ろをくっついて離れなかったんだから」
「そうだったの?」
「覚えてないの? 帰りたくないって、お兄ちゃんと離れたくないって、毎回泣いて泣いて。パパと困っちゃったんだから」
お父さんが抱っこすれば、背中を後ろに反らせて嫌だ嫌だって、ごねたって。
「だから、いつもあっくんが門のところまで、毬を抱っこして送ってくれてたんだから。覚えてないの?」
「んんん」
覚えていたり覚えていなかったりの途切れとぎれの記憶を、頭の中で手繰り寄せる。
「あっくんだって、子どもなんだから重かったでしょうに。それでも、にこにこしながら抱っこしてくれてたの。あっくんは、本当に優しかった」
「優しかったよね」
「『重くない、喜んでる顔が見たいから抱っこする』って。あっくんなら間違いなく、今ごろ素晴らしい青年に成長してる」
「ママの太鼓判は自信満々」
「保証する、賭けてもいい」
こういうところ、私はママに似たんだ。噛み殺すあくびが聞こえたみたい。
「眠いんでしょ」
「朝早かったから」
「お弁当作り?」
「当たり」
「頑張ったね、お疲れ様」
「ありがとう。院長ね、喜んで食べてくれたの」
「よかったね、毬のハンバーグやだし巻き玉子おいしいもん」
「おかずに入れたよ」
「やっぱり。毬の食べたい、羨ましいなあ」
ママが身もだえるような、きゃっきゃっした声を上げた。
「ママに逢ったら作るね、約束」
「うん、遊びにいらっしゃいよ」
「ハンガリーか、行ってみたいな」
「案内はママでもいいし、そうだ世界中のエリート留学生のイケメン紹介してあげる。それともハンガリーのイケメンがいい?」
ウキウキ弾んだ声が楽しそうに、私にジョークを飛ばしてくる。
「私に紹介は必要ない」
「びっくりした、大きな声でピシャリと。冗談よ」
「ごめんなさい、そんな大きな声だったかな」
「さて、ママは仕事に戻るね。日本は、もう十時でしょ、ゆっくり休んで」
「うん、お風呂も夕食も済ませたし、あとは眠るだけ」
「おやすみなさい」
「ありがとう、午後も頑張ってね」
「ありがとう」
スライドして携帯を置いた。楽しく一日を過ごせたおかげで、今夜はぐっすり眠れる。
ベッドに入ると、あっという間に寝ついた。
知らないで呼んでいたの? アバウトさに吹き出した。ママのフレンドリーな性格が羨ましい。
「いつも毬の面倒を見てくれて、毬もなついてて後ろをくっついて離れなかったんだから」
「そうだったの?」
「覚えてないの? 帰りたくないって、お兄ちゃんと離れたくないって、毎回泣いて泣いて。パパと困っちゃったんだから」
お父さんが抱っこすれば、背中を後ろに反らせて嫌だ嫌だって、ごねたって。
「だから、いつもあっくんが門のところまで、毬を抱っこして送ってくれてたんだから。覚えてないの?」
「んんん」
覚えていたり覚えていなかったりの途切れとぎれの記憶を、頭の中で手繰り寄せる。
「あっくんだって、子どもなんだから重かったでしょうに。それでも、にこにこしながら抱っこしてくれてたの。あっくんは、本当に優しかった」
「優しかったよね」
「『重くない、喜んでる顔が見たいから抱っこする』って。あっくんなら間違いなく、今ごろ素晴らしい青年に成長してる」
「ママの太鼓判は自信満々」
「保証する、賭けてもいい」
こういうところ、私はママに似たんだ。噛み殺すあくびが聞こえたみたい。
「眠いんでしょ」
「朝早かったから」
「お弁当作り?」
「当たり」
「頑張ったね、お疲れ様」
「ありがとう。院長ね、喜んで食べてくれたの」
「よかったね、毬のハンバーグやだし巻き玉子おいしいもん」
「おかずに入れたよ」
「やっぱり。毬の食べたい、羨ましいなあ」
ママが身もだえるような、きゃっきゃっした声を上げた。
「ママに逢ったら作るね、約束」
「うん、遊びにいらっしゃいよ」
「ハンガリーか、行ってみたいな」
「案内はママでもいいし、そうだ世界中のエリート留学生のイケメン紹介してあげる。それともハンガリーのイケメンがいい?」
ウキウキ弾んだ声が楽しそうに、私にジョークを飛ばしてくる。
「私に紹介は必要ない」
「びっくりした、大きな声でピシャリと。冗談よ」
「ごめんなさい、そんな大きな声だったかな」
「さて、ママは仕事に戻るね。日本は、もう十時でしょ、ゆっくり休んで」
「うん、お風呂も夕食も済ませたし、あとは眠るだけ」
「おやすみなさい」
「ありがとう、午後も頑張ってね」
「ありがとう」
スライドして携帯を置いた。楽しく一日を過ごせたおかげで、今夜はぐっすり眠れる。
ベッドに入ると、あっという間に寝ついた。


