歩を進める、私のうしろをついて来てくれているみたい。
私がしゃがむと隣にしゃがみ、今度は地面の土でスカートが汚れないように、裾を気にして持っていてくれる。
「ありがとうございます」
「俺のことは構わないから、ゆっくりと遊べ」
「はい」
微笑みが口角に浮かぶ顔に、弾む声で返事をした。
パンダみたいな模様のとか長毛種や垂れ耳のウサギとか、あのころよりたくさん種類が増えたんだ。
「マンションではペット飼育禁止だから、ここは天国です。楽しくて幸せです」
「それは、なにより」
「連れて来てくださってありがとうございます」
「どういたしまして」
撫でたり、他の子を抱っこしたりしている合間に院長を見ると、空いている右手で近くのウサギを撫でながら観察していた。
「スカート大丈夫ですから、両手でウサギに触れてください」
「大丈夫、いいから遊んでろ」
「はい」
さすが獣医師、見方が愛でるというよりも、先に骨格とか耳の中とか目の周りとかに目がいくみたい。
「このあいだの子も元気になってよかったですね」
「やっぱり餅屋は餅屋。ウサギに詳しい獣医師に、速やかに引き継ぐことが重要だ」
「あのウサギは、院長の初期対応が完璧だったから、元気になったんです」
「ああ」
高くそびえ立つ鼻筋が、ますます高々になったみたい。頬も少しだけ緩ませて嬉しそう。
プライドが高くて、治せないのに治せるって治そうとして、よけいに患畜を弱らせる獣医師もいる。
院長はできることには力の限り、手を尽くす。
でも、いらないプライドは捨てて、できないときはできないと認めて、患畜の命を最優先にして他の専門医を紹介する。
「ウサギやモルモットの抱き方も、お兄ちゃんが教えてくれたんです」
「いろいろと面倒見がいい男の子だったんだな」
「はい。両親からも教えてもらいましたが、あのお兄ちゃんは、動物のことはもちろんですが、なんでも知ってると思います」
あのころ、お兄ちゃんに教えてもらったことが、たくさん頭に浮かんできた。
「ちょうど私が、なぜなぜ期だったんです」
「今でも好奇心旺盛だ。その上、俺に対しても質問攻めだから、小さなころの質問期が想像できる」
眉を下げて顎を引いて、視線を合わせて笑っている。
「お兄ちゃん、イライラしないで付き合ってくれました。動物以外でも、どうして、どうしてって」
自分で自分の小さなころがおもしろくて笑っちゃう。
「お兄ちゃん尊敬します。よく根気強く付き合ってくれましたよね」
「きっと男の子は、川瀬が理解したときの嬉しそうな笑顔を見るのが、好きだったんだろう」
私がしゃがむと隣にしゃがみ、今度は地面の土でスカートが汚れないように、裾を気にして持っていてくれる。
「ありがとうございます」
「俺のことは構わないから、ゆっくりと遊べ」
「はい」
微笑みが口角に浮かぶ顔に、弾む声で返事をした。
パンダみたいな模様のとか長毛種や垂れ耳のウサギとか、あのころよりたくさん種類が増えたんだ。
「マンションではペット飼育禁止だから、ここは天国です。楽しくて幸せです」
「それは、なにより」
「連れて来てくださってありがとうございます」
「どういたしまして」
撫でたり、他の子を抱っこしたりしている合間に院長を見ると、空いている右手で近くのウサギを撫でながら観察していた。
「スカート大丈夫ですから、両手でウサギに触れてください」
「大丈夫、いいから遊んでろ」
「はい」
さすが獣医師、見方が愛でるというよりも、先に骨格とか耳の中とか目の周りとかに目がいくみたい。
「このあいだの子も元気になってよかったですね」
「やっぱり餅屋は餅屋。ウサギに詳しい獣医師に、速やかに引き継ぐことが重要だ」
「あのウサギは、院長の初期対応が完璧だったから、元気になったんです」
「ああ」
高くそびえ立つ鼻筋が、ますます高々になったみたい。頬も少しだけ緩ませて嬉しそう。
プライドが高くて、治せないのに治せるって治そうとして、よけいに患畜を弱らせる獣医師もいる。
院長はできることには力の限り、手を尽くす。
でも、いらないプライドは捨てて、できないときはできないと認めて、患畜の命を最優先にして他の専門医を紹介する。
「ウサギやモルモットの抱き方も、お兄ちゃんが教えてくれたんです」
「いろいろと面倒見がいい男の子だったんだな」
「はい。両親からも教えてもらいましたが、あのお兄ちゃんは、動物のことはもちろんですが、なんでも知ってると思います」
あのころ、お兄ちゃんに教えてもらったことが、たくさん頭に浮かんできた。
「ちょうど私が、なぜなぜ期だったんです」
「今でも好奇心旺盛だ。その上、俺に対しても質問攻めだから、小さなころの質問期が想像できる」
眉を下げて顎を引いて、視線を合わせて笑っている。
「お兄ちゃん、イライラしないで付き合ってくれました。動物以外でも、どうして、どうしてって」
自分で自分の小さなころがおもしろくて笑っちゃう。
「お兄ちゃん尊敬します。よく根気強く付き合ってくれましたよね」
「きっと男の子は、川瀬が理解したときの嬉しそうな笑顔を見るのが、好きだったんだろう」


