「じゃあ私も本音を言いますね。私は主任よりも、もっともっともーーーっと嫉妬深いです。総務部の工藤さんとか、用度課の木村さんとか、うちの部の徳田さんとか、色んな人に嫉妬しまくってますから、大丈夫です」
「…………その人たちはなんなの?」
「全員、主任のことが好きなんです」
「─────は!?」
「ほら、やっぱり気づいてない」
呆れたように口をとがらせる彼女に、今度は立場が逆転したような気がして焦る。
「主任は、私にはもったいないくらいの人なんです。だからいつも不安です。すごくモテるから」
「モテてないよ!モテたことなんか人生で一度も」
「鈍感なんですね……仕事はあんなに出来るのに」
「それを言うなら森村さんだって」
突然、一方的に話を進め始めたので反論しようとしたら、森村さんは大きく首を振って遮るように口を開いた。
「今日、本当は越智さんに二人きりで食事に行こうと誘われました。でも、ちゃんと断りました。…………ごめんなさい、主任と付き合ってること、言っちゃいました」
「えー!言ったの?」
「もう諦めてもらいたかったので。内緒にしてくださいってつけ加えて。そしたら─────」
すっごく青ざめてました、と彼女は申し訳なさそうに苦笑いした。
そんな彼女を見ていたら、自分がどれだけ小さいことでイライラしてたのかを思い知らされる。
心配なんかしなくても森村さんはちゃんと俺を見ていてくれるじゃないか、と。
また取り越し苦労をしてしまった。
月曜日に越智くんに会ったら、彼はいったいどんな顔で俺と話すんだろうと若干気にかかったが、今はどうでもいい。
「ごめん。なんか、器が小さいのがバレたかな」
「……すみません、さらに好きになってしまいました」
はい、出ました。森村さんの必殺技。
こういう可愛いことをさらっと言う破壊力。
もう俺の負けです。
「─────たぶん、俺の方が好きだと思います」
彼女は顔を真っ赤にして、でも嬉しそうに笑った。
この人には一生勝てそうもない。
きつく抱きしめながら、そう思った。
おまけ
おしまい。
お楽しみいただけましたでしょうか?
有沢主任も色々考えてたんですね〜(他人事)
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!



