ハイド・アンド・シーク




俺は別に、恋愛に関しては消極的ってわけではない。
これまでは好きだと思う人がいれば、わりとちゃんと積極的にアプローチしてきた。
でも今回はそれが、すごく難しい。

上司と部下っていう関係もそうだけど、彼女が目も合わせてくれないっていうのが引っかかる。
すでに嫌われてそうで、進めない。



それが、もしかしたら違うのかも、と思い始めたきっかけは、コンペの親睦会の帰りだった。

偶然にも住んでいる場所が近く、最寄り駅が同じだと分かったあの日、俺は森村さんと一緒に帰ることになり、いつもよりも数倍は多く会話を交わした。
その中で、彼女は時々目を合わせてくれることに気がついた。
まあ、目が合うとすぐにさっとそらすのは前と変わりなかったが。

なんというか、俺のことが嫌だとかそういう感じではなく、緊張しているように思えたのだ。恥ずかしそうに目を伏せるのを何度も見ていて、嫌いという感情とは違うんじゃないかと。

会社で話す時とは違う。
わりとちゃんと話をしてくれるし、よく笑う。
リリース原稿がうまく出来ないという悩みも打ち明けてくれた。

だからついもう少し一緒にいたいと思ってしまって、家まで送ると申し出てしまった。
踏み込んだことを言い出したなと後悔もしたけど、でもそれよりも彼女が隣にいるという幸福感に負ける。


─────これは、自分が思っている以上に彼女のことが好きなのかも。それを自覚した。


「このまま帰したくない」とうっかり言ってしまいそうで、理性を働かせてなんとか我慢したけど。
たぶん、もっとお酒を飲んでいたら無理だったかもしれない。