少し前から営業部と連携して進めていた新宿一等地にタワーマンションを建設する計画がようやく動き出した。
長いこと空き物件になっていたその土地は、クライアント会社の新社長がどう扱おうか迷っていた土地でもあり、土地活用の相談の時点で俺もかなり関わっていたものだった。
企画部に来て、たぶん一番大きな案件とも言える。

売却するか、定期借地にするか、自己活用するにしても商業施設がいいのか医療系施設がいいのか、賃貸経営にすべきか。
結局、分譲マンションを建設するということで決まったのだが、何社からかすでに打診されているという。そりゃあ、あんないい場所を放っておく会社はないだろうから、こちらでも想定していた。

うちともう一つの会社の二社でコンペティションをすることになったあとは、もうただひたすら忙しい日々を送ることになる。

慌ただしい毎日の中で営業部長にひょいとリストを渡されて、なんだっけと首をかしげた。

「今度のコンペに、手伝いに来てくれるスタッフのリスト。けっこう各部署から来てくれることになったよ。ありがたいねぇ〜」


初めてのコンペだったし、これだけ時間をかけて口説いてきたクライアントを最後の最後で落とせなかったら、と少し切羽詰まっていたけれど、リストの中にある人の名前を見つけてホッとする自分がいた。

『営業課企画部 森村菜緒』

彼女も来てくれるのかと思ったら、なんだかやる気が出た。頑張れそうな気がした。

……たとえ彼女が、目を合わせてくれなくても。