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次の日、いつものようにトーレンが迎えに来て案内された場所は執務室。
ヒアがいなくなっても他にやることができてノイシュは昨日の感じだとそんなに落ち込んでいなかったけど、本当は寂しいんじゃないかな、と思いながらトーレンに続いて部屋に入るとたくさんの本に囲まれたノイシュがいた。
……ちゃんと寝たんですかね。
「おはよう!」
「ああ…」
右手を挙げて元気に挨拶してみると生返事が返ってきてガクッと転びそうになった。わざと包帯でぐるぐる巻きになっている方の手を挙げたんだけどな、効果無かったな。
ぶすっと不貞腐れながら近寄って山積みになっている本の中から1冊を取り出すと、ドラゴンについてだった。
これは生態、これは歴史、これは図鑑……
図鑑!
「あー、あの。ディアンヌ様まで夢中にならないでください」
分厚いドラゴンの図鑑を開こうとしたら、"あの"と強めに言いながら表紙をトーレンが上から押さえつけるものだから読めなかった。またもぶうぶうと頬を膨らませて不貞腐る。
ドラゴンの図鑑、気になるのに!
「ノイシュ様もいい加減にしてください。夢中になるのはいいですけど節度を持って頂かなければ」
「……腹減った」
「だから!これから朝食ですってば!」
やかましいトーレンの声を聞いて顔をしかめたノイシュは渋々と本を置いて奥の部屋に引っ込んだ。そう言えばそこから美味しそうな匂いが漂ってくる。
私もその匂いに誘われるようにしてふらふらっと部屋に足を踏み入れると、黄金色に輝くフレンチトーストが白いお皿に乗っているのがわかった。
きゃーと久しぶりに興奮しながらホクホクとした気分で席に座る。トーレンからメープルシロップを受け取ってそれに垂らすともう目の保養だった。フレンチトーストなんていつぶりだろう。
サラダとスープも頂いてコーヒーを飲み、フレンチトーストの甘さの余韻を感じつつ至福のひとときを満喫した。
「それで、鱗文字はまだ残ってるの?」
名前がないから仮で"鱗文字"というとノイシュは理解したのか聞き返すこともなく淡々と答えた。
「いや…消えていた。恐らく生きたドラゴンから離れたため鱗の細胞が死んだからだろう。おまえが見つけたのは昨日剥がれ落ちた物だったからな」
なんだ、やっぱり知ってたんじゃん。
「全てスケッチしてあるから見落としは無いだろうが、やはり古代文字とは別物だと俺は考えている」
「崩した可能性もないの?」
「無くもないが、古代文字通りに矢印の流れに沿って読んでも関連性が見つからなかった」
変形していたからどうやら1つの文字で意味が完結するのかもしれないと考えたノイシュは、その矢印の順番通りに文字を訳そうと思ったけど意味が通らなかったらしい。
鱗文字では本当は、あ→さ→ご→は→ん、になるのに、実際に古代文字で当てはめたら、こ→み→ぬ→り→わ、みたいになる感じかな。
うん。確かに意味不明だ。


