この年にして、これ程愛しいものが出来るとは思わなかった。

家族に恵まれず、愛情を育まれることなく育った俺が………。

初めは……同じような境遇の彼女に同情しているのだと思っていた。

父親の浮気を目撃したり

母親の愛情を感じられなかったり…………。

唯一の味方の姉は、彼女に沢山の愛情を注いでくれるが……

その優しさが重く感じる時もあり……コンプレックスを刺激してしまう。

まだ17歳にして、一人で生きることを決心する彼女を……

不憫に感じ………やがて守りたくなってきた。

それでも、まだ生徒として見守っていたつもりだったが……

俺に恋をしたという彼女が………

俺への迷惑を考えて……『好きでいさせて下さい』と言われた時には………

恋を認めるしかなくなってしまった。

付き合いたいという女は……自慢じゃないが、かなりいた。

勝手に彼女面する女も。

しかし、好きでいることの赦しをかった女の子は……

彼女だけだった。

健気な彼女を見ていると………

これまでの人生もそうやって生きてきたことが伺えて

俺が守って、温かい居場所を与えたいと思ったんだ。

教師という立場が邪魔をするのなら

大人の力で、誠意一杯守り抜こうと決めたんだ。

そうして……この4月を迎えた。

昨年のように、クラス担任として側で見守ることが出来ない今……

俺は……元担任という立場を使って、クラス分けに手加減を加えた。

教師と恋愛している……親友の望月遥こと『はぁちゃん』と同じクラスにした。

我慢強い彼女の変化を、近くで見て教えてもらうためだ。

それからもう1つ。

彼女達は、まだ知らないが………伏兵がいる。

最強の協力者の存在を………後30分もすると………気づくことになる。