目を覚ますと………マスクをした千尋がベットにすがって眠っていた。

あれ程、隣で待ってろと言ったのに……。

だけど………

目覚めた時、誰かが側にいるのは……良いもんだなぁ。

小さい手が、俺の手に重なっている。

夢の中で安らぎを感じたのは……この手のお陰かもしれない。

起きたら取り合えず注意しないといけない彼女に

「ありがとう」と、そっと呟いた。

きゅ~っ…………………。

この場に相応しくない音で目覚めた千尋は

俺と目が合うと

あれこれと感情が漏れる表情をしている。

『マズイ!寝ちゃった。』

『先生が起きてる。』

『お腹の虫が聞こえた??』と。

プッ!

千尋らしい。

これには、さすがの俺も怒れない。

「おはよう。」

「……………おはよう……………ごめんなさい。」

「何に対して?」

ちょっと意地悪を言うと

「約束を破って寝ちゃったり、起こしたり………色々。」

「いいよ。
俺もグッスリ寝て、熱も下がったみたいだから。
悪いけど、そこのタンスから着替え出してくれる?」

お約束の恥ずかしさを味わってもらうため

俺もドキドキしながら、身構えて待つ。

「上から二段目にあるやつ。」

中身はパンツ。

『キャッ!』とは言わないで

『どの下着??』と聞いてきた。

はぁ??

恥ずかしくないの??

「あっ、だったら………手前のボクサーパンツを…………。」

むしろ俺の方が恥ずかしくなる。

………………………何で??

あまりに不思議だったから、千尋に聞いてみる。

「あぁ、そういう事か。
先生、わざとだったんだ。
残念でした!
小さい頃従兄のお兄ちゃんが、大学に近いからって同居してたの。
お母さんが勤めるくらいまで。
だから、パンツは見慣れてるんだぁ。」

そういう事かぁ~

朝イチの楽しみを奪われて、ガッカリしてる俺に

「おうどんにする?
それとも……………」

「予約していたケーキって………どうなった?」

「えっ?昨日取りに行って、冷蔵庫に入れてるよ。」

「だったら、それを食べよう。」

「でも……………」

甘いものが嫌いな俺を気遣ってくれている。

「尋は優しいよ………ありがとう。
手も………繋いであったし………。」

素直にお礼をいう俺に………今度は、真っ赤になった。

パンツは平気なのに、変な奴。

キスしたいところだけど、うつすと困るから

頭をポンポンとさすってみる。