プルルルルプルルルル…
どこかで電話が鳴っている。
お前、いつも言ってるだろ!どうしてできないんだ!
どこかで誰かが怒鳴っている。
す、すみません…。
どこかで誰かが小さく謝っている。
聞き慣れた声、聞き慣れた音、見慣れた顔、見慣れた光景。
うんざりする。
俺の毎日はどうしてこうも退屈なんだ。
決まった時間に起きて、満員電車に乗って、仕事して、決まった時間に家に帰る。
何も変わらない。
刺激も面白みもない。
ただただすぎていく毎日。
退屈だ…。
周りに聞こえないように、そっとため息をついた。
「伊月、ちょっといいか。」
「はい。」
前を歩く上司の遠藤さんの背中を見ながら、
何かやらかしたっけな
と、記憶を探る。
いや、何もないな…
俺は普通の社員だから。
態度も悪くない。
仕事もできないわけじゃない。
ブサイクでもない。
太ってもいない。
でも特別これといった特徴もない。
特別気を遣えるとか、
仕事がずば抜けてできるとか、
特別イケメンだとか、
スタイルがいいとか、
そんな特徴もない。
どこにでもいるごく一般の会社員なのだ。
誰の目にもとまらず、誰にも覚えられない。
そんな毎日なのだ。