×× side



透き通った声が、メロディが、校舎に響く。


まさに今、彼女は作曲をしている。


それを遠目で見る、××。


彼女の想いは総て、音に乗る。


嬉しい想いも、悲しい想いも、寂しい想いも、楽しい想いも。


恋する想いも、憎しみの想いも、


曲を描きたいと思う想いも、理想を描きたい想いも、友の為にの思う想いも、


この場所が美しいという想いも、総て。


だから彼女の作品は素晴らしい。


だから彼女は《天才》では無く、《鬼才》なのである。


…ただ、彼女の下に残る想いは、一つもなくなっていく。


それは総て、楽譜に込められていた。


楽譜を読めば、彼女の総てが分かる。


総てが分かると同時に、


彼女の想いが、無くなっていくことに気付く。


このままでは、彼女は死んでいくだろう。


彼女のココロが死んでいくだろう。


だが、彼女を止められる人はいない。


それこそ、彼女の生き甲斐である作曲を奪ってしまったら、


彼女に何が残るだろう。


……え?ゲーム?


…うん…そうだね…。


…彼女がゲームにのめり込んでいる理由はただ一つ。


それをやっている時の彼女は、


彼女ではないから。


…意味が分からないって?


ふふ、何れ分かるさ。


さあ、話を戻そう。


××はどうしても、彼女を止めなければならない。


それは、××の使命であり、生き甲斐であり、運命であるから。


想いを総て失う彼女は、ココロをも捨て、解放されたいが為に、身体をも棄てる。


それでも彼女は曲を創り続ける。


きっと彼女は、このままいけば、自分が壊れることを知っている。


壊れることを承知で、自ら破滅を選ぼうとしている彼女は何れ、


自《分を》殺《そうと》するだろう。


××は思う。


自ら破滅を望む彼女を、××が殺せばいいんだと。


彼女が、そんなにも破滅を望むなら、


××の手で、そして自分も一緒に死のう。


独り、決心をする。


大丈夫、怖くない。


彼女の為ならば、何を犠牲にしても良いんだ。


何故なら××は、______。













アーティストは何かを犠牲に生きる。


とある人は、《努力》を。


とある人は、《経験》を。


とある人は、《知識》を。


とある人は、《空想》を。


とある人は、《家族》を。


とある人は、《思い出》を。


とある人は、《情熱》を。


とある人は、《人である》ことを。


とある人は、《信頼》を。


とある人は、《感情》を。


とある人は、《モノ》を。


とある人は、《想い》を。


とある人は、《記憶》を。


そしてこれらは全部、


《未来》


を、犠牲にしている。


何かしらの犠牲を経て、彼らはは未来へと羽ばたいていく。


必ずしも、それが成功するか分からない。


もしかしたら、地獄を見るかもしれない。


死ぬほど辛いかもしれない。


けれども、好きなものを好きでやっているということは、とても素晴らしい。


誰にも言えないモノだとしても、


《キミ》は《キミ》だ。


個性を大事に、将来を生きよう。


人にはそれぞれ、個性というものがある。


個性がない人なんていない。


必ず、人には素晴らしい個性という名の魅力がある。


さあ、悲観にならないで。


自分を見返してみて。


いつかきっと、気づく日がある。


さあ、前を向いて歩こう。


我が道を行こう。


光り輝く、未来への道に。