それから数日後。

「なぁ、奏汰…好きな人できだろ?」

「はあ?なんだよ…急に」

「奏汰が保健室から帰ってきたあの日から、様子がおかしい!俺はその理由を初恋と見た!!さあ白状したまえ!」

「はあ…」

こうなったときの郁は、はっきり言って面倒くさい。

隠そうとすればするほど入り込んでくる。

厄介だ。

「そうだよ。好きな人ができた。」

「え?!マジだったん?」

「郁が聞いてきたんだろ??」

その信じられないって顔やめろ…

「いやあー嬉しいなー!奏汰はさ顔はすっげーイケメンなのに、彼女いないし、聞けば、恋もしたことないって言うじゃん?」

「まあ…そうだな…」

「そんな奏汰がついに好きな人が……」

「あのな…俺は」

続きを言おうとしたら急に顔をパァーーと明るくして席を立った。

「紗世!!どうしたの??」

あー彼女か……

郁は、彼女ができてから変わった。

彼女にはとにかくベタ惚れだし、少し呆れるレベルだ。

だけど、最近になってその気持ちはわからなくはない。

なんていうか…俺の好きな人、すなわちあの日俺を助けてくれたあの人を廊下で見かけるたびに、どきどきしてきて、胸が苦しくなる。

名前はまだ知らないけれど、まずは友達から初めて…

いつか、彼女の特別になれたらいいな。


数時間後……

「そういえばさ、奏汰の好きな人ってこの学校なん?そうだったら俺が見極めてやる!」

「お前は俺の母さんか!」

好きな人って教えていいのだろうか…

初めてだからわからないな…

「あの、郁…いますか?」

そう考え事をしていると、声がした。

普通だったら、反応しない女子の声。

だけど反射的に反応した。

「おーい、郁女子が呼んでんぞー?」

「あー!わりい!教科書借りたままだったなー」

「大丈夫だよ、いっちゃん。残念だったね…紗世の借りられなくて。」

「何言ってんだよ、結月。からかってんのか?」

な…なんで、郁とあの子が親しそうなんだ?? 

友達だったのか?!

「なんて顔してんだよ…せっかくのイケメンが台無しじゃねーか…!」

「あの子と知り合いなのか?友達なのか?」

「……?結月のことか?」

「そう、そのこ。」

「そうだけど、なんでそんなことー…あ、そういうこと。
俺が紹介してやる!任せろ」