美結は小学校低学年からの親友だ。当然私がどんな境遇なのかを知っている。

いや、この学校に私の境遇を知らない奴なんて、ひょっとしたら皆無かもしれない。

小学校からの同級生は美結以外にも何人もいるし、私の名前は一般的な女子高生よりも少しだけ有名だ。

事故の当時、唯一の生き残り、奇跡の少女、なんていう枕詞で私の存在はメディアがこぞって紹介をしていたためだ。

もちろん私はそんなことは望んでいなかったけれど、拒絶できるほど大人ではなかった。

ーーたった一人の生存者が、まだ小学5年生の少女。同乗していた両親は死亡し、少女は懸命に生きていく。

そんな感動ストーリーが、世間の人間は大好きだ。

まあ、最近は私の周りにメディア関係者がうろつくことも少なくなったけど。来た場合も、なっちゃんが追い払ってくれている。

ーーというわけで、私が「奇跡の少女」ということは、恐らくみんなが知っている。

たぶん私の知らないところで、小学校や中学校の同級生たちが「吉崎さんって、例の子だよ」と話題にしてることは容易に想像できる。