のばら

前園(佐々木)あざみの投稿を、あたしはこまめにチェックするようになった。
Facebookに会員登録しなくてもweb検索すれば出てくるし、彼女の投稿は閲覧範囲が指定されていなかったのだ。
あざみは市内在住で、子どもがふたりいるらしい。その長女が自分と同い年であることにあたしは気づいた。
写真に添えられたキャプションに、「のばら、いよいよ受験生。目指せA高!」と書かれていたのだ。
その写真を、あたしは食い入るように見つめた。
市内の中学校の制服を着て桜の下で微笑むその娘は、母親譲りの美貌に恵まれていた。
佐々木のばら。その名前と顔は、あたしの頭にしっかりと刻みこまれた。

そのとき、決意したのだ。
あたしが、お母さんの仇を取る。
お母さんの高校時代の青春を踏みにじった女の娘に、同じ思いをさせてやる。
佐々木のばらがA高に行くなら、あたしだって行く。
彼女に近づいて、かりそめの親友になって、そうしてある日突然裏切ってやるのだ。

自分の犯した過去の悪事が、何の罪もない愛娘に返ってきたことを知って苦しめばいい。
カルマは巡る。そのことを思い知ればいい――――。