お父さんはまだ帰ってこない。いつものことだ。
仕事が忙しいのは事実なのだろうけど、残業だと言いながらお酒のにおいをぷんぷんさせて帰ってくることもあり、そんな夜はたいてい夫婦喧嘩になる。
どんなことがあっても、あたしはお母さんの味方だ。
不在がちなお父さんより、いつも傍で気にかけてくれるお母さんが昔から大好きだった。
「学校、うまくやれてるの?」
視線はテレビに据えたまま、お母さんが口を開いた。
やっぱり、それを確認したかったんだ。ひと月に一度は、こんな日がある。
「心配いらないってば。期末もだいぶ、手ごたえあったし」
「勉強もだけど、友達とかよ。今日も遊んできたんでしょ」
「うん、4人でパフェ食べて、買い物して」
「そう」
「うん」
「大丈夫なら、いいけど」
お母さんは、ちらりと視線をよこした。こめかみの白髪がだいぶ増えたな、と思う。
「大丈夫だってば」
あたしは力強く請け合った。
この後に続く言葉は、わかっている。
「あんまり信用しすぎないようにね、他人のこと」
ほら、やっぱり。
「いざとなったときの逃げ道、ちゃんと作っておくのよ。相談できる先生とか、先輩とか」
仕事が忙しいのは事実なのだろうけど、残業だと言いながらお酒のにおいをぷんぷんさせて帰ってくることもあり、そんな夜はたいてい夫婦喧嘩になる。
どんなことがあっても、あたしはお母さんの味方だ。
不在がちなお父さんより、いつも傍で気にかけてくれるお母さんが昔から大好きだった。
「学校、うまくやれてるの?」
視線はテレビに据えたまま、お母さんが口を開いた。
やっぱり、それを確認したかったんだ。ひと月に一度は、こんな日がある。
「心配いらないってば。期末もだいぶ、手ごたえあったし」
「勉強もだけど、友達とかよ。今日も遊んできたんでしょ」
「うん、4人でパフェ食べて、買い物して」
「そう」
「うん」
「大丈夫なら、いいけど」
お母さんは、ちらりと視線をよこした。こめかみの白髪がだいぶ増えたな、と思う。
「大丈夫だってば」
あたしは力強く請け合った。
この後に続く言葉は、わかっている。
「あんまり信用しすぎないようにね、他人のこと」
ほら、やっぱり。
「いざとなったときの逃げ道、ちゃんと作っておくのよ。相談できる先生とか、先輩とか」



