のばらが着ているインド綿の赤いワンピースは、あたしが一緒に選んだものだ。
「そ、千代子のお見立てなの」
のばらは極上の笑みを見せる。女のあたしでさえ、心をつかまれそうな笑顔を。
「意外と主体性ないんだよね、のばらは」
ふてくされたようにテーブルに肘をついて、樹里が言う。
「あーあ。食べても太らないひとはいいですなあ」
その様子に、はっとした。
これはチャンスかもしれない。
ケーキパフェの店にしばらく居座ったあと、中途半端に時間を持て余し、ファッションビルの中をぶらついた。
あたしたちの住む地方都市の駅前は、本当になんにもない。
絶対に東京の大学に行くと、あたしはかたく決めている。雑誌に載っている服を着て、毎日賑やかな街に繰り出し、失われた青春を取り戻すのだ。
そう、こんなのほんとの青春じゃない――――。
「やっぱ、1時間だけでもカラオケ行く?」
珍しくのばらが気遣いを見せたけれど、
「いいよ、今更」
樹里は手にしていたバーバパパの雑貨を棚に戻しながら、のばらの顔も見ずに言った。
その声に含まれたかすかな棘を感じとって、あたしは亜由美と顔を見合わせた。
「そ、千代子のお見立てなの」
のばらは極上の笑みを見せる。女のあたしでさえ、心をつかまれそうな笑顔を。
「意外と主体性ないんだよね、のばらは」
ふてくされたようにテーブルに肘をついて、樹里が言う。
「あーあ。食べても太らないひとはいいですなあ」
その様子に、はっとした。
これはチャンスかもしれない。
ケーキパフェの店にしばらく居座ったあと、中途半端に時間を持て余し、ファッションビルの中をぶらついた。
あたしたちの住む地方都市の駅前は、本当になんにもない。
絶対に東京の大学に行くと、あたしはかたく決めている。雑誌に載っている服を着て、毎日賑やかな街に繰り出し、失われた青春を取り戻すのだ。
そう、こんなのほんとの青春じゃない――――。
「やっぱ、1時間だけでもカラオケ行く?」
珍しくのばらが気遣いを見せたけれど、
「いいよ、今更」
樹里は手にしていたバーバパパの雑貨を棚に戻しながら、のばらの顔も見ずに言った。
その声に含まれたかすかな棘を感じとって、あたしは亜由美と顔を見合わせた。



