「父は冤罪で処刑、母も流行病でなくなっていますので、何の憂いもありませんでしたわ。今回だって、遠い親戚であるという理由だけで、嵐雪殿の推薦を受けたくらいですもの」


「御両親まで……辛かったわね」


そっと、気遣わしげに手に触れられると、どういう反応を返したらいいのかわからない。


「命は天からの贈り物ですわ。家族のことは辛かったですが……これも、天命だと思っています。ですから、私は尚更に命を救いたいのです。嵐雪殿の話では寝込んでいる方がいらっしゃると伺っているのですが……」


本当の言いたい言葉を呑み込んで、上手く話を動かす。


人に話を聞いてもらうのは苦手だ。


話しているうちに、泣いてしまいそうになるから。


縋れた黎祥は、もういない。


「あ、そうね」


すると、栄貴妃は手を打ち、すぐに顔を曇らせた。


「早速で悪いのだけど、見て欲しい人がいるの」


栄貴妃が、ゆっくりと立ち上がる。


「こっちよ」


連れていかれた先は、栄貴妃の部屋からあまり離れていない、少し暗めの一室。