「私や他の兄弟が、妬ましかったであろうな。最も、私のことは憎んでいたんだろうが」
「……」
本当にそうなんだろうか。
翠蓮は今の話を聞いた上で、どこかに引っかかりを覚えた。
双子を産んだ、明鈴は先帝のことを嫌っていた。
姉の真実を暴くことと引き換えに、彼に妃にされて双子を授かって、双子のことは愛していても、先帝のことは愛せないと。
でも、彼に仕えていた人は、素晴らしい人だったと言った。
円皇后は愛しているけど、愛されない。あの人のそばにいたいだけ、色んな言葉を、元・蘇貴太妃に遺していた。
蘇貴太妃は自身にあった出来事、遺された言葉、自分が死んでも黎祥たちに伝わるよう、手紙をしたため、各地に送り付けていて。
円皇后の件について書かれたそれは、皇太后様の元に届いた。
色んな謝罪の形に、涙を流していた皇太后様。
書いてあるのは、円皇后に対する気遣い、そして、円皇后の一心に先帝を愛した証拠。
「……確かに、黎祥を憎んでいたかもね。自分は愛されていない母親から、自分自身も母親にすら愛されず生まれてきて、湖烏姫が悪いにしても、幼い頃から引き離されて育ち、皇太子という権力を得たことで会えると思っていた母親には拒絶され、挙句、その母親は黎祥に殺されたんだから……」
元は、黎祥の母親を湖烏姫が殺してしまったことが、黎祥が湖烏姫を殺した原因だ。
それを先帝は分かっていたんだろう。
わかった上で、埋められない何かを埋めたくて、暴れたのかもしれない。
(……なんて、既に死んだ人達のことについて色々と考えを張り巡らしても、真実は何も見えてこないのだけど)
「……翠蓮」
「何?」
「お前は、幻滅するか?」
「?」
急にそんなことを言われても、何も要領を得ないのだが。

