目を見開いた彼らに、翠蓮は微笑んだ。


「色々とお心遣い、ありがとうございました。嵐雪殿。お役に立てるよう、頑張らせていただきます」


黒宵国では、薬師は白の服を着るように言われている。


だから、翠蓮の衣服は嵐雪さんが用意してくれた白の薬師服だ。


化粧も施し、一見、翠蓮とは分からないようにしてる。


念の為、黎祥とすれ違った時の為に。


普段、全然化粧をしない分、違和感を感じるが、それはここにいる以上、致し方ないということで。


嵐雪さんと別れ、翠蓮は栄貴妃付きの侍女が現れるのを、桃花の木の下で待った。


流石、高位の妃と言おうか。


庭園はなんとも表現しづらいほど、美しかった。


花一本まで手入れされ、花は自分の一生を懸命に生きている。


凛と咲くその姿に、感嘆の息が自然と漏れるほど。


「―順、翠玉様でいらっしゃいますか?」


花の美しさに見とれていると、妙齢な侍女が現れた。


簡素な格好をして、香もそんなにきつい香りはない。


間違いなく、高位女官のはずなのに……栄貴妃の人柄が窺えるような、女訓書に書いてあるような、模範的な女人である。


「はい。お初に、お目にかかります。本日より、お世話になります」


丁寧に口上を述べ、頭を下げる。


すると、にこりともせずに、


「よくぞ、おいでになられました。栄貴妃付きの蘭花(ランカ)と申します」


と、彼女は言った。