「楚妃もまた、秋遠と上手く行きそうだし」


「へー…………って、ええ!?」


後宮がなくなった今、黎祥の後宮にいた妃達は自分のこれから先を自分で選べるように時間を与えられている。


楚妃というのは、先帝の妃もそう呼ばれているのもあるが、後宮がなくなってからは黎祥は自分の妃の楚家の者を"楚妃”と呼んでいる。


翠蓮が遊祥を授かった時くらいの頃、同じように子供を授かったと言った彼女だったが、事実、懐妊などしていなくて、事件に巻き込まれてからの虚言だった。


そう言えと、脅されたそうだ。


紅翹の振りをしていた、彼女の双子の蘭花さんは自分が後宮内で動きやすくなるように、紅翹さんと自分を見分けられる楚家の人間を遠ざける為に。


彼女達の一家は皇家に忠誠と命を捧げている分、周囲にいる人間を、自分を支えてくれる人達を大切にするから、守るから、民からの支持も高い。


彼女は侍女を数人、人質に取られ、虚言をした。


周囲は、基本的に楚家の人間を素直に信じる。


それは、彼らの今までの行為があるからだ。


楚家という名前だけで、誰もが信じてしまうほど、彼女自身も、彼女の家も真っ直ぐで、大きくて、優しくて。


もちろん、先帝の時代の中のような腐敗した朝廷では、楚家は行動しにくかったことだろう。


それでも、それを乗り越えて、彼女達は生きてきた。