「―あ、そういや、翠蓮には言ってなかったな」
少ししんみりとしてしまった空気の中、黎祥は。
「嵐雪がな、結婚することになった」
と、めでたいことを。
「本当?」
嵐雪もまた、順家現当主の息子である。
いつかは順家の当主となるであろう彼を支えるのは、誰……。
「姉上が嫁ぐそうだ」
「……え?」
呆気。
本当、呆気。
「姉上って……麗宝様は違うでしょ?」
あの二人は接点が無さすぎるって言うか、麗宝様がそんなに簡単に結婚に応じるのなら、嫁ぎ遅れていない。
「他に、黎祥が姉上というのは……彩姫様!?」
―彼女しか、ありえない。
「ああ。何があったかは知らんが、そういうことになったそうだ。まぁ、とりあえず、良いだろうって頷いた。姉上が乗り気なら」
「乗り気、だったの……?」
あの、彩姫様が。
黎祥はこくん、と、頷いて。
「みんな兄弟が結婚していくし、嵐雪を支えていきたいって思ったって。嵐雪となら、政治の話とかもできるし、ちゃんと聞いてくれるし、まともな答えは返せるし、何より、放っておいたら、嵐雪は過労死しそうだと」
「……確かに」
頷いてしまえるのが、悲しいな。
嵐雪さんは確かに、仕事と結婚しているような人だ。