「麟麗様、祥基の言う通りです。気にすることなんて、何もありません。麟麗様は麟麗様らしく、幸せになってください。祥基の良さは、私が保証しますから」


ね、と、微笑みかけると、


「ありがとう……」


震える声で、でも、嬉しそうに、彼女は笑って。


私はそんな彼女を見て、少しほっとした。


幸せになることを望んでくれている姿に、本当にほっとしたんだ。


「祥基!」


「ん?」


「麟麗様のこと、幸せにしないと許さないからね?」


「わかってるよ。苦労はさせると思うが、大切にする。そう、約束してるんだ」


祥基が目元を和らげて、麟麗様に微笑みかける。


麟麗様はどこか恥ずかしそうに頷いて、そして、


「翠蓮……いいえ、皇帝陛下、皇后陛下」


その場に、傅く。


「私達の幸せの為に、これから先も、どうか、素晴らしき日々が続くよう、民の笑い声が絶えぬ国をお作り下さい」


「……」


「我が父と母が成し遂げられなかったこと、深く、お願い申し上げます」


悔やむでもなく、責めるでもなく、ただ、願う。


これからの未来に、この国に、幸多からんことを。


「―分かりました」


翠蓮はその優しくて強いお願いに、深く頷いて。


「龍神の名の元に、誓います」


黎祥を振り仰ぎ、頷き、手をとる。


声高らかにそう告げて、この日、私の残りの人生の生き方が決まった瞬間だった。