先々帝が麟麗様を振り向くと、麟麗様は静かに頷いて、それを見て、鈴華様は。
「お姉様ももう、一人ではないもの」
と、朗らかに言った。
「一人ではない?」
それに思わず、首をかしげてしまう。
嫌な予感はしていたが、やはり、そうなのか。
「お姉様は、ちゃんと大切な人ができたのよ。翠蓮」
目を向けると、麟麗様は顔を覆って。
祥基は堂々と、麟麗様の腰を抱いていた。
「……一体、なんなんだ……」
それに疲れた顔を見せるのは、黎祥である。
「す、翠蓮……」
「はい?」
麟麗様に呼ばれて近づくと、
「ごめんなさい……」
何故か、謝られて。
「?、何がです?」
幸せなら、いい事だと思うのだが。
「翠蓮のおかげで、今、こうして生きていられているのに……相談もしないで、私も鈴華も勝手に……」
―ああ、なるほど。
「そんな……」
「そんなことを気にする性格じゃないよな?翠蓮は。一度きりの自分の人生、どう選択しようが、文句言う権利はないもんな?」
気にしなくていい、そういう前に、考えていたことを祥基に言われてしまって、苦笑い。
「祥基さん!」
「気にすんな、麟。こいつのことは、まぁ、なんだ……その、黎祥の次にはわかっている」
うん、と、頷いて、納得した振りをする祥基。
絶対、祥基の方が黎祥より翠蓮のことを理解しているだろうに、そこは翠蓮の夫である黎祥を立てたらしい。
本当、よく出来た男である。