「見極めたらって……」


「幸せになれるのなら、いいと思いますよ。兄上の……先帝の娘という理由で、今まで大変な思いばかりしてきたのです。幸せになっても良いでしょう。父上には話していませんでしたが、奴婢同士の恋愛をも、私は自由にするつもりです」


「!」


「―父上がしたくても、出来なかったことでしょう?」


―一体、何を話しているのだろうか。


この間、黎祥が変えたいと言った、皇宮の中の空気の話だろうか。


それに先々帝が力になってくれるというのなら、それは何でも代わりのきかない、かなり大きな力だが。


って、今はその問題は置いといて。


「―あ、きた!」


鈴華様がそう叫んだ瞬間、黎祥と先々帝の間の会話が止む。


鈴華様は笑顔で、訪れた人を手招く。


(おやおや、まぁまぁ……)


何となく予想はついていたが、やはり。


鈴華様が下町に来てから、親しくしていた男の子。


確か、手紙に書いてあった、悠遠がそこに立っていた。


「遅くなってしまったね。大丈夫?鈴華」


「うん!おじい様達には話したわ。そうしたら、相手を連れて来いって……」


「うん。まぁ、そうなるだろうね」


鈴華様より、少し歳上だと思う彼。


優しく穏やかな笑みを浮かべて、彼は黎祥たちの前に行くと、その場で膝を折った。