「……翠玉様」


二人の間に流れた数秒間の沈黙の後、嵐雪さんは突然、翠蓮に深く頭を下げてきた。


「貴女をこのようなところに引きずり込んでしまい、申し訳ありません」


「……」


「それでも、私達は彼に幸せになって欲しいのです」


嵐雪さんに倣って、後宮警吏達も頭を下げてきた。


と、いうことは、彼らも黎祥を慕っている人達なのだろう。


「どうか、貴女だけは陛下の味方でいてください」


翠蓮が、皇帝陛下の寵愛を得るはずがない。


得たら、ここを去る。


その条件で、翠蓮はここにやってきた。


それでも、と、願う、この人たちは知っている。


自分たちは"仕事の部下”の線を、決して超えられないのだと。


「私は世界のどこにいても、あの人の味方ですよ」


「……」


「そして、心の支えには、貴方達だってなれます」


こんなにも、黎祥を思う人がいる。


黎祥の心に入れなくても、それでも、皇帝陛下の彼を支えられる。


それは、例え、皇帝陛下の黎祥だとしても、彼の半身は孤独じゃないってことだから。