「先々帝は……」
「病死、とのことだそうです。皇太后陛下が看取られたと聞いていますが、革命の最中でしたので……詳しいことは、分かっておりません」
「遺体などは?」
「ございます。けれど、病死、とのことでしたよ」
医者に調べてもらったのだろうか。
それならば、信頼出来るはずなのに。
それでも、どこかに引っ掛かりを覚えているのか、嵐雪さんの表情は晴れなかった。
「如何様にしろ、皇帝陛下の御世が長く続き……ここに、先々帝の御世と同じよう、太平が訪れることを願うばかりです」
先々帝の御世の終わりより、急に傾き始めた国。
先帝は即位後から革命まで、女と遊興に耽り、国をどんどん傾けていった。
そんな時、国を懸命に支えていた、宰相が死に。
支えを失ったこの国は、一気に地に落ちた。
「私も、太平を望みます」
碧寿殿を見上げながら、翠蓮は言う。
「皇帝陛下ならば、やってくれます」
きっと、ううん、間違いなく、黎祥はそれをやり遂げてくれる。
この国の民を、幸福へ導いてくれる。
ほんの少しの間だけど、一緒にいた彼はそういう人だった。
民と共に学び、共に笑う人だった。
そんな貴方が王様だから、自分もこの国で頑張ろうとなお、思えたのだから。

