大好きだった。


だからこそ、死んでしまった事実を受け入れきれなかった。


おまけにここに来て初めて知った、鳳雲お父様と血を繋がっていなかったという真実は、思った以上に翠蓮の肩にのしかかった。


それでも、前を向くしかなかった。


うつ向けば、誰かが死んだ。


弱音を吐けば、自分が許せなかった。


黎祥を愛して―……黎祥を守ったから、灯蘭様を守ったから、自分の義を守ったから、鳳雲お父様は死んだのだと知って、とても、鳳雲お父様らしいと思って。


黎祥と結ばれて、黎祥に心を預けて、真実をもっと、もっと、と、暴いていく中で、知った。


先々帝のもう一人の弟、紫京様が自分の実父だということ。


つまり、死んでしまった莉娃お母様と紫京様が普通に結ばれていたのなら、翠蓮は黎祥と出会うことも、恋に落ちることも、ましてや結婚することも無く、ただの不幸な従兄弟として、黎祥を見ていただろうと思う。


鳳雲お父様はただの伯父様で、普通だったのなら、翠蓮は王女だった。


けれど、運命は残酷だから。


有り得なく大きな代償を払わせて、それでも、得たものはかなり小さくて。


黎祥と結婚して、遊祥を産んで、幸せな一時を過ごしている今、二人の苦しみがあったから成り立っている幸せだと実感する今、とてつもなく泣きたくなる。