「取引、ですか……?」


「裁かない代わりに、冷宮には入ってもらうことにはなるがな。私の妃として、何か一つの罪を背負った罪人として、冷宮で生きろ。だが、一生涯、閉じ込めるわけではない。そこは配慮する。妃達を殺したくらいで、冷宮に入れるのも、極刑も変な話だからな……」


それだけ、妃の命は軽い。


命は誰のものでも尊く、平等に重いものだと、皇后陛下は言うだろう。


でも、この皇宮ではそんなものなのだ。


それが、当たり前。


それが普通で、逃れられないもの。


「今回の件、兄上が調べたところ、お前の陰謀に興じて、我らを傷つけ、廃しようとしたのは、蘇家なのだ。だから、蘇家を見せしめに、族滅する」


淡々としたその一言に、溜飲が下がる。


瞳に優しさなどなく、


笑顔で、そんなことを言う。


この皇帝は、只者ではない。
―……私の直感がそう告げている。


「一時期、冷宮に入っていてくれ何年になるかはわからぬが……生活に不自由はさせぬ。翠蓮も、その点は考えるだろう」


皇帝はそう言っているけど、先程、皇后陛下と先々帝は、首謀者と共に、業火の中に消えたと―……。


「私は二人を信じている」


驚いている私の思考を読んだのか、笑いながら、そう言って。


「今回の、ことは……まぁ、大したことでもないしな。殺された妃も、覚悟の上だろう」


「覚悟……?」


「ああ、そなたは私たちのこういう所が許せぬのであったか?」


首を横に振った。


―そうじゃない。そうではなくて。


「そうだろう。この魔窟に足を踏み入れるんだ。死ぬ覚悟も、殺す覚悟もないと。ここは、戦場だ。女限定のな」


覚悟―……。