「……そなたを裁いた所で、私たちが得るものは何も無いからだ」
私の質問に、答えてくれる皇帝陛下。
「多くのものが、毒に倒れた。確かに与えたのは、きっかけを作ったのはお前だろう。でも、それを広めたのは、各個人の意思。私に刺客を差し向けたのは、そなたかもしれない。もしかしたら、違うことをしようとして、そういうことにしてしまったのかもしれない。それは、そなたにしかわからない。私の弟妹に関することもそうだ。皇族を憎んでいたとして、今、我ら淑家になり代われる家など、この国には存在しない。国権を奪うことは、不可能なはずだ。国外から、連れてこなければ」
戦上手。
冷酷非情。
それから付けられた、"冷武帝”。
「最も、この国の周辺は隣国で固められているし、入って来るには難しいだろう」
「……」
「だから、ありえない。先帝の皇后の身内と言っても、この国でそれを知っている人は数少ないだろうし、そなたにそこまで広い伝手があるとも思っていないからな」
全てを、読んでいた。
真実を、知ったその日から。
それでも、目を瞑ってくれたのか。
ありえない。
私が言えた話でもないが、人の命がかかっていたというのに。
「今回の首謀者として、そなたを裁いたところで必ず、どこかに歪みが起こる。それは、今、この国を建て直している身からすれば、良策ではない」
この皇帝は、似てる。
「だから、私と取引をしよう」
お姉様に……翠蓮様―皇后陛下に。
真っ直ぐに信じている。
翠蓮お姉様のことを。

