「多くの毒を、後宮内に巡らせて……翠蓮をあんなにも傷つけて、お陰様で、彼女は永遠に私の檻から逃げられない。最期まで、私の人生に巻き込まれ続けるんだ。この言葉の意味がわかるか?」
翠蓮が、好きだった。
彼女は、姉様と同じような生き方をしていた。
彼女が不幸にならないように、
ずっと、行動してきた。
皇帝のそばにいることは、彼女にとっては幸福であったろう。
でも、その結末は悲しいものだと知っている。
「そんなに……貴方は……」
薬師だった翠蓮に傾倒しているかと思ったら、普通に別のお妃様とも関係を持っていたじゃない。
なのに……そんなに、彼女を愛していたの?
有象無象の一人じゃなかったの?
私が何もしなくても……最初から、貴方は―……。
「残念だったな。―お前がしていたことは、最初から全て無駄なこと」
「……」
皇帝は、翠蓮を愛している。
それも異常な程に。
面子を保つ為だとか、
子供のためだとか、
皇子を産んだからだとか、
そういう理由とは関係なしに。
ただ、彼が翠蓮を愛しているだけ。
「……兄上が、お前にあげた花の意味、知っているか?」
「……」
黄色の百合の花……顔を上げると、
「"偽り”だよ」
―皇帝は、笑っていた。

