「こちらです」
案内された先は、碧寿宮(ヘキジュキュウ)。
「ここは……」
「現在、後宮内で一番の力を誇っていると言われる栄貴妃のお住まいになられている宮です」
「栄貴妃……一番の力とは、つまり……」
「寵愛を受けている訳ではありませんが、一番、力の強い家ということです。翠玉様はお会いしたことがありますよね。静苑の妹君でございます」
「静苑様の?」
あの日、嵐雪さんと翠蓮の家を訪れた栄静苑は、李将軍に並ぶ猛者もして有名であり、栄将軍として名が知られている。
皇帝陛下の右腕だと言うし、そう考えると、妹が後宮内で貴妃の座についていることも、有力妃として注目されることも理解できる。
まぁ、理解できるのは、それもこれも嵐雪さんの最短確実教育を受けた賜物だが。
李将軍は兄が憧れていたから知っていただけであり、そこまで国の情報に翠蓮は明るくない。
そんなことを気にしていられる、十七年では無かったわけだし。
「静苑様の妹君がいらっしゃるということは、李将軍の御息女もいらっしゃるのですか?」
翠蓮の問いに、嵐雪さんは首を横に振った。