黒宵国後宮。


そこは、皇帝陛下の為の花園。


「……」


むせ返る化粧の香りと花の香り。


美しい衣に、薄っぺらい笑顔。


キラキラとした御殿はとても場違いで、翠蓮は目の前の光景に些か、怯んでいた。


「大丈夫ですか?翠蓮……翠玉様」


後ずさりしそうになる翠蓮を心配した嵐雪さん。


名前が違うのは、そう、翠蓮がお願いしたからだ。


今日から、翠蓮の名前は嵐雪さんに手配してもらったように、『順翠玉(スイギョク)』である。


「す、凄い、ですね……」


素直な感想を述べる。


「まぁ、後宮は裏の朝廷ですから」


すると、嵐雪さんは苦笑して。


「えっと……それを牛耳るのが、皇后、でしたっけ?」


「まぁ、極端に言えばそうですね」


嵐雪さんについて、後宮内を歩く。


今日からここが、翠蓮の仕事場。