【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「守ると、約束した。誓ったんだ。今度こそ、守ると―……鳳雲とな」


鳳雲お父様と同じくらいに優しい祥星様の背中を守るように、翠蓮は立つ。


この人は不器用で優しくて、本当に良く、黎祥と似ている。


「天華!蝶雪!紫京様たちを支えて!」


「翠蓮様っ!!」「ダメです!!」


「言っていたでしょう!?私の命令は、絶対って」


「こんなこと、望んでなんか―……っ!」


泣いている、二人に笑いかける。


「また、後で会いましょう?」


これで終わりではない。


これで―……終わりではないのだから。


翠蓮は懐に閉まっていた、丁寧に折りたたんでいた紙をクシャクシャに丸めて、黎祥の方に投げた。


「後宮の人たちを避難させて、その紙に書いている人を牢へ」


「翠蓮!!」


「大丈夫。―死ぬわけにはいかないわ」


―誰かを守る為ならば、命をかけなさい。


遠き日の、鳳雲お父様の言葉が蘇る。


蝶雪は翠蓮の意思を尊重してくれるのか、黎祥の手を引いて。


「―保護をして」


その光景を見て、翠蓮が手のひらに永華珠を握りしめてつぶやくと、それは空気の中に溶けていった。