「いつだって、いつだって!!私はあの人のそばにいた!ずっと、ずっと、そばに!!それなのに―……彼が私を見てくれることは無かったのじゃ!!」
「……」
恨みの声を、悲しんでいる彼女の声を、ただ、黙って受け止める祥星様。
「貴方が愛してくれないから、私は鳳雲様を愛したのよ!それの、何がいけないのじゃ!?あなたが悪いんじゃない!!貴方がっ、貴方が―……っっ!!!!!」
声が、絶え絶えに。
黎祥の表情は変わらず、祥星様も無表情で。
「―下ろして、黎祥」
翠蓮は黎祥に下ろしてもらうと、自らの足で地を踏んだ。
「あの子がね、全部、燃やすんですって!だから、私はあなた達を殺すのよ!一緒に死にましょう!?」
「……死なないよ」
「っ、死ぬのよ!もう、道はないわ!分かっているでしょう!?」
火の海。
火に囲まれるって、滅多にない体験。
翠蓮たちに残されたのは、死ぬ道だけ。
そう、彼女は思っているのか。
天華たちは動かず、翠蓮たちの命令を待っている。
「皇后を傷つけることは許さんと、そう言われ、私は怪我をした!良いのう、慕ってくれる子がいるなんて!!」
「……」
憎悪の目を向けられたけど、何も言えない。
だって、何の感情も抱かない。
「黎祥の妃たちを……死に追い込んだのは貴方ですか?」
翠蓮が尋ねると、
「いいえ?おおかた、あなたを慕ったあの子がしたんじゃない?」
と、媽妃は言う。
溢れ出す鮮血が、彼女を染める。
翠蓮は何も言えなくて、でも、何かを言わないといけなくて。

