「十六夜?―ああ、尹賢太妃のこと?密通とかしている、あの汚い女のことか!言われるままに人を殺してくれたんじゃ!私がお願いしたら、簡単にな!何の感情もないような、お人形!!!ああ、スッキリした!殺される前に、彼女を殺さないとと思っていたのじゃ!私が殺されては、作戦を実行―……っっ、ああぁぁっ!!!」
高らかに叫ぶ中、響き渡った絶叫。
見れば、紫京様の膝が深く沈む脇腹。
徐々に、力を加えていっているのがわかる。
滲み出す血。
人の声とは思えない、声。
「―媽妃、お前は私に鳳雲の面影を重ねているだけだろう」
そんな光景にも眉ひとつ動かさない祥星様は、一言。
淑鳳雲―翠蓮の父。
翠蓮を愛し、育んでくれた人。
優しくて、強くて、憧れの人。
類まれなる戦の才能を持ち、成人する前から、兄を支えた。
そんな翠蓮の育て親の名前が出た途端、
「―っ、ええ、そうよ!世界で一番、彼を愛していたのは私!!それなのに、どうして!?どうして、あの人に選ばれたのが、李家の白蓮なのよ!?」
「白蓮と鳳雲は幼なじみだ。二人の恋路を邪魔するものは、私が消してきた」
「うるさい!うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさいっっ!!!!!」
発狂する。

