「フフフッ……」
その様子に笑いだした尹賢太妃は「流石、円皇后の娘だな」と、笑みを深める。
「堂々としてて、素敵だ」
「……誤魔化さないでください」
「誤魔化してなどいない。全てを話した今、私が翠蓮の産んだ母だからといって、翠蓮が私に気を使う必要は無いし、私もみっともなく命乞いをするつもりもない。私が望むのは、この世界とのお別れだ」
「……」
妙にスッキリしたような顔をする尹賢太妃―お母様は斬りつけられたらしい、傷を服の上から撫でて。
「翠蓮」
翠蓮の名前を、優しく呼んだ。
「……なんですか?」
目を向けると、
「お前は間違えないようにな」
と、言われる。
「間違え……?」
「この後宮が魔窟であることは、お前も気づいているだろう。逃げられない、閉じ込められて……自由に鳴けない、羽ばたけない。この黄金の牢獄に、皇帝も妃も捕われている」
「……」
「ここに来た時、既に葉妃は死んでいた。桧妃の姉が、第二皇子・流雲殿下を盗み出し、自らの息子として育てようとした。……けれど、何故か、彼女は愛晶の元へ彼を連れていき、命を絶った」
それは、どうして?
「そして、桧妃は先帝に唆されて、先々帝の妃のひとりだった佳音のもとから、三歳の娘を連れ出した。それが、第七皇女の露珠だ。……桧妃は私が殺し、露珠は私が育てた」
「……さっき、佳音さんは不思議な自害をしていたと言いましたね?」
それは、どういう状況で起きたこと?
尹賢太妃は明景の方を見、そして、
「……話してもいいか?」
と、許可をとる。

