悲しむ少女に手を差し出した、一人の銀髪の青年。


―そなたは?


震える声に、詠うように彼は応えん。


―その者を救いたければ、私と契約を結ぶべし。


真っ赤に染まった衣に触れて。


―この方を、貴方は救えんと?


女王の問いに、青年は笑い給ふ。


―私に、名を。
さすれば、その者を救う力が、得られんと。


女王、青年に名を与えん。


その名、女王の消えし後も宝にせん。


彼の者、女王を探し求めり。



【宵始伝―契約の始まり―より】