『莉娃(リアイ)姉様、お父様に貰ったの!一緒に食べましょう?』


莉娃には使用人ですらも自分の存在を無視をする家の中で、駆け寄ってきては笑顔を向けてくれ、誰も認めてくれなかった莉娃の存在認めてくれた、【姉】として慕ってくれた妹がいた。


数代前、皇帝の外戚となったせいか、妙に名高かった、莉娃の実家―いや、実家と呼べるのだろうか?


女遊びの激しかった父は多くの女を孕ませて、その度に問題になり、でも、"何故か”、その女達から子供は生まれることは無く。


莉娃は確かに、父の気まぐれで手をつけた妾の子だった。


でも、確かに莉娃は父の子で、産んでくれた人は正妻ではなかったけれど、それでも、妹と半分は血の繋がっていた。


初恋の人を初めて見たのは初恋の人の祖父、業波帝が恩赦を下し、大きな宴を開いた時のこと。


業波帝が崩御なされた、ひと月前の宴だっただろうか。


それは業波帝にとっては最後の宴となったが、莉娃はそこで、幼いながらも、懸命に剣を振るっていた皇子に恋をした。


その名前は、淑鳳雲。


母譲りの黒の瞳と髪。


洗練された動きは、幼子のそれではなく。


いつもどこか遠くを眺めていて、物憂げな雰囲気に惹かれていく日々。


言葉を交わせるだけでも幸せで、そんなある日、無理やり引き離されて、本邸と別邸で暮らすことになった妹と莉娃は顔を合わせることになる。


王位継承争いが終わり、都にも少しずつ賑やかさが蘇ってき、血にまみれた彼を見ると、心が震えた。


涙が溢れた。


そして、そんな彼に家の位の高かった妹は、迷いもなく抱きついていた。


そんな妹を羨ましいと思うと同時に、襤褸と使用人の残りものである食べ物しか寄越されない自分はなんて惨めなんだろうと思った。