「……お久しぶりです」
母と共に、辺境に飛ばされた以来だ。
久しぶりといえば、久しぶりである。
「……」
「……」
「………」
「………」
「…………」
「…………」
―黎祥の枕元に椅子を引き寄せて、腰を下ろした父。
何かを切り出せばいいのに、何も切り出さずに悩んでいるらしい父。
何かを話してくれないと、黎祥も何も言えないのに。
「―……いい加減、喋らぬか」
皇太后はため息とともに、父の頭を叩く。
流石、女傑。
先々帝の頭を殴るなんて、らしいといえばらしい。
「黎祥が、困るだろう?」
「いや、でもな?」
「色々と言いたいことがあると言って、昨夜、紙にまとめていたのは何じゃったのじゃ?それを聞かねば、話は進まぬぞ。話さなくていいのなら、すぐに後宮の……」
「―そうだ。私のことはどうでもいいから、今すぐ、妃たちを不安の淵から助けてやるんだ。数名の宦官を呼び出して……」
「……はぁ、すぐに帝王の顔になるんだから」
これみよがしに、大きなため息。
皇太后に切り出されて、言いたいことを思い出したのか。
「その前に、状況を説明してやらんといかんじゃろう。―黎祥、報告通り、蘇貴太妃は死んだ。そして、その火を放った妃は……今、翠蓮が会いに行っている」
「!?」
皇太后のその一言に、黎祥は慌てた。
その反動で落ちた、枕元の水差しが褥を濡らす。

