「―きついかもしれんが、右大臣を呼び寄せた。お前、話せるか?」


「……」


兄の問いかけに頷いて、別室にいるらしい右大臣を連れてきてもらう。


寝ておけと言われたけど、皇帝が横になったまま、対談というのも悪いので、何とか、体を起こす。


少し気怠いが、傷の痛みは慣れているからどうってことは無い。


しばらくして、現れたのは、行方知れずだった父の皇帝時代の頼りなる臣下、右大臣・趙礼月(チョウ レイゲツ)と、息子と思われる人。


「……初めて会うが、初めましてだと味気ないな。下町で会っているわけだし」


「……あの時は驚きましたよ。どうして、貴方みたいな人があそこにいるのかと。気のせいだと誤魔化しましたが、やはり、陛下自身でしたか」


肩をすぼめ、苦笑する趙礼月は後ろにいた息子と思われる人間を表に押し出すと、


「死んだ前宰相・趙班明(チョウ ハンメイ)の息子の趙秋月(チョウ シュウゲツ)です。私の補佐として、連れてきちゃいました」


「そうか」


確か、彼が翠蓮の幼なじみの結凛の夫。


「結凛……妻と子は息災か?」


秋月にそう話しかけると、少し驚いた顔をして、そして、


「はい、お陰様で……」


戸惑いげに、礼する秋月。


確か、翠蓮が話していた。


結凛の子と遊祥は同い年だったか。


「結凛には少し前、世話になったことがあるんだ。聞いてないか?」


「聞いてはいますが、まさか、事実だとは。……妻がお世話になりました」


「クッ、世話になったのは、こっちの方だ。そして、これからはお前にも力を借りることになる。国を整えるため、かつての最盛期を取り戻すため、私に協力してほしい」


秋月は一瞬、その言葉に目を見開くと。


「……勿体なき御言葉」


深く、拝礼する。