『祥星様、白蓮と鳳雲様を―……』


君があんなことを言うなんて、意外だった。


諦めたのか、と、問えば、『妾はそなたの妻だから』と、君は言った。


後悔しているのかなんて、今更聞けないけど。


「それに、まだ、事件は解決しておらぬ」


「……」


君は聡明だ。


愛されていないことを早々に悟った上で、それでも、祥星のそばにいた。


「―が今回の事件の……いや、―の妃の調べたことでも……」


「……」


利益なんて、特にないのに。


こんな敵だらけの場所、窮屈で仕方なかっただろうに。


「祥星様はどう思う?」


それなのに、君は。


祥星が出て行ったあともずっと残り続けて、祥星が放り投げてしまったものたちでさえも、包み込んで守ってしまった。


「調べは出ているから、すぐにでも……祥星様、聞いておるか?」


そんな君を尊敬している。


あの、君が私に手を伸ばしてくれた日から、ずっと。


「聞いてるよ」


苦笑しながら言えば、彼女は小さな二つの拳を細腰に当てて、ふくれっ面をして。


「いいや、聞いておらぬ。その返事、笑顔、全て、彩蝶と悪戯をしていた時の顔にそっくりじゃ!」


少し強くなったけど、君は本当は弱さを隠しているだけ。


「そうなの?でも……うん。悩むことなどない。すぐに終わるよ」


まだ、人が何人か死んでしまう?
―うん、そんなことは当たり前。
変わることに、犠牲はつきものだ。


それを恐れるのだったら、血に塗れた皇位になんて座れない。


そういうものを乗り越えて、黎祥は大きくなっていく。