「祥星様」


燃え上がる宮を眺めていると、声をかけてきた翠蘭。


「……なぁ、私を責めるか?翠蘭」


炎から目を逸らすことなく尋ねれば、


「……いいえ。彼女が全ての恨みを背負ってくれていることをわかっていながら、妾も否定してこなかった。―感謝致します。何を言っても無駄だと思っていたのですが、せめてのもの餞となったことでしょう。彼女に、最期に言葉をかけてくれて」


と、翠蘭は頭を下げてきた。


昔から、不器用で優しい女である。


「……私のいない間、留守を守ってくれたことを感謝する」


「何もしておりませんよ」


「何を言う。黎祥を導いたのは、君だろ」


「……話をしに行っただけですよ。それに、自分の息子を殺す手伝いをした妾を、まだ、妻と呼べますか?」


「呼べる。……勇成は、あいつ自身が弱かった」


「……」


「自分の息子とは思えないよ。残念ながら、愛情は感じなかった。でも、それがこの国を滅亡まで追い込んだというのなら、それは私の罪だ」


祥星は、ある程度、炎が宮を燃やし尽くしたところで消火を命じた。


不完全なまま、愛晶を救い出したくなかったからだ。


「君は私の妻だよ。そして、愛晶も。……だから、悲しむのなら、悲しみなさい。君は昔から、優しい人だね」


祥星は手を伸ばして、翠蘭の頭を撫でた。


抱き寄せると、衣を握ってくる。


「優しくて、可愛い」


「っ、そんなことは……」


「いや、彩蝶も言うだろうよ。君が可愛いと」


「……………想像できるのが嫌じゃ」


声を震わせて、見上げてくる。


優しく頬を撫でてやると、彼女はそっと目を閉じて。