「今だって、そう!可哀想に!李皇后しか愛さない、愚帝がいるから!後宮の妃達は誰よりも不幸!」


「不幸の尺度を、そなたで測るな!幸せな人間も、ちゃんとおる!!」


「?、何を言っているの?愛さないのに、幸せなんてあるわけないでしょう……」


「皇帝だって、人間じゃ!じゃから、誰を愛そうと自由だろう!?それに―……」


声を張り上げた。


いつぶりだっただろうか。


「―何事ですか!?」


その声を聞きつけて、唯一、愛晶を信じ、愛晶のそばに居てくれた、皇帝の妃の一人、愛晶が出来なかったことを成し遂げて、大事に皇帝の子ではない子を育てている向淑妃との連絡を繋いでくれていた、若琳が駆けつけてきて。


「若琳!逃げるのじゃ!!」


「っ、―様!?何をなさって……」


「いいから、逃げろ!皇帝に、助けを求めよ!向淑妃を、何がなんでも守り抜くのじゃ!」


若琳を背後にかばい、目の前の女を睨みつける。


身につけていた、年増には似合わぬ婚礼衣装は乱れていたが、そんなことを気にする余裕もなくて。


「自らの運命に逆らったことが、そなたにはあったのか!!??」


―愛晶は、自らの家族に復讐しようと考えるよりも先に、廉海に逢いに行くことを考えた。


なぜなら、最低な行為をしていた父は死んでくれたから。


そして、兄の罪の数々を調べ上げてもらうように、柳太后には手紙を書いたし、蘇家の族滅だけは免れるように、お願いした。


最低な人間はたくさんいるけど、蘇家の中にも、愛に溢れた人はいる。


身勝手で、知らない人達を恋人と死に別れさせることは嫌だった。


兄や、その他の非道な人間がどんな方法で死のうがどうでもいいが、それだけは嫌だった。


自分がされて嫌だったから、人にはしないと誓っていたんだもの。