時が経つ事に、愛晶の周りからは人が消えた。
成長していく度に、流雲は愛晶から遠ざかった。
キラキラと輝いていた瞳からは、光は失われた。
莉玲にそっくりだった光を、彼は失ってしまった。
―その時に初めて、莉玲が望んでいたことに対する意図を履き違えたと思った。
無事に生きて、育ってくれればいいだけじゃない……幸せになって欲しいと、莉玲は言っていたのに。
無力にも、愛晶にはそれが出来なかった。
(どんな風に、廉海は愛してくれていた……?)
時が経つほどに、遠ざかる。
あのころの幸せな日々。
あんなにも愛晶を苦しめた父は、病で死んだ。
祥星様もまた、歳をとった。
翠蘭様は相変わらずの優しさで、残された子供たちを包み込んだ。
彩蝶は、第六皇子とどこかへ行ってしまった。
違う。
違う。
こんなのは、愛晶の望んだ道じゃなかった!
いつだって、昔だって、抵抗したって押さえつけられた、あの時のように……今更、悲しかったと泣き叫ぶには、何もかもが遅すぎた。
もう一度、最初から始めたいと願うほどに―……莉玲、あなたは今、どこにいますか?
どうか、貴方の息子を守って。
時は目まぐるしくすぎていく。
ある時、現れた一人の不思議な力を持つ少女は色んな病を癒し、笑っていた。
祥星様の妃として保護されて、女の子供を産んで……皇太子だった第一皇子とも仲の良かった彼女は、後宮内で不貞を働いただの、密通だの騒がれていたが、愛晶からしてみれば、異国より来たと言うんだから、作法がわからなくて当然だと思っていたし、初々しさは出会ったばっかりの彩蝶のようで……笑顔は、莉玲のようで嬉しかった。
それでも、冷たく相手したのは警戒してもらわなければならなかったから……いや、長年のくせで、そうしてしまったのかもしれない。
そうこうしているうち、その不思議な少女が産んだ皇女は行方不明になり、祥星様は病に倒れ、第一皇子が皇位を継いだ。
そして、暴政を繰り広げ、祥星様の妃だった若い妃たちは力づくで、第一皇子の妻とされた。
『愛されたいんです……』
そう、後宮の一角で嘆いていた少女を……円皇后を、今でも覚えてる。
細い腕で、あの暴君を抱きしめようとした、一途な皇后。

