莉玲がいなくなってからはまた、虚無な日々が続いた。
年はすでに数えで、三十。
翠蘭様は第五皇子を御出産なされ、実家からの催促はうるさかったけれど、できないものは出来ないのだから、仕方がない。
祥星様はそんな愛晶を気遣って、続けて寵愛を授けようとしてくれたけど、愛晶はそれを丁重にお断りした。
どうしても、皇子を産みたいわけではなかったからだ。
産んだって、その子は無事に大きくなれる保証がない。
次は家のせいでないにしろ、人を失うことはもう、うんざりだったのだ。
それに何より、異民族よりの献上品の中にいた一人の女性を、祥星様は溺愛していた。
初めて、愛する人を見つけたようだ。
翠蘭様はあくまで、友人だったということだろう。
深い寵愛を注がれて、勿論、恨みは彼女に―……彩蝶に向かっていた。
でも、それの軌道をずらし、愛晶は自分に恨みが向くように仕向けた。
その方が、色々と好都合だったのだ。
死ぬ確率が上がるけど、それで死ねるのなら、廉海に会いに行けるから、問題なかったし。
でも、その選択をすぐ後に、後悔する。
祥星様の寵姫、彩蝶が第六皇子を産んだばかりの時の話だ。
愛晶の宮の内院に、何故か、ひとりの子供が残されていた。
初めて見た時、愛晶はもちろん、言葉を失う。
四阿で、すやすやと眠る幼子は、莉玲にそっくりだった。

