結局、莉玲から生まれてきた子供は皇子だった。
莉玲も比較的に元気で、祥星様の御代の末期くらいまで存在していた、子供の名前をつけるのは五歳の頃という習わしを守っていた莉玲は、皇子の事をずっと『二皇子』と呼んでいた。
その子はとても愛くるしく、嫌でも、廉海との間の子の事を思い出す。
そのことに気づいているのか、気づいていないのか。
愛晶に向かって、莉玲は話してくれた。
『この子にはね、地位や名誉に執着するんじゃなくて、誰か一人を、真っ直ぐに愛せる人に育って欲しいと思うわ。そして、目の前のことに感謝できるような子に』
『……』
『例えば、今日は天気が良かったおかげで散歩ができたとか、今日は雨が降ってたおかげで、お花が潤ったとか。……何事も、前向きに考えて欲しいと思うの。流れる雲のように、世界の全てに感謝して、時折、逆らうような。そんな子供でいい。健康で、この子が幸せであれば―……』
皇子に名前をつけることを楽しみにしていた莉玲は、
結局、皇子に名前をつけることは出来なかった。
莉玲は皇子が四つの頃、帰らぬ人となった。
自死でも、病でもなく、ただ、事件、そう教えられた。

