【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




『―何やっているの!?』


たまたま、何故か訪ねてきた妃は目を剥いて、怒った。


『ちょっと、死のうと思って……』


そして、無感情にそう答えた愛晶を見て、


『待って。死ぬ前に、何があったか、私に話して』


そう、言った。


彼女は生きる喜びも、悲しみも、全てを知っていた。


全てを抱きしめて、『愛しい』と笑える強い人。


愛晶よりも八つも下の女の子の名前は、葉莉玲(ヨウ リレイ)。


花を好む、花のような佳人。


愛晶が話終えると、彼女は泣いていた。


泣いて、そして、彼女は泣きながら、愛晶を抱きしめて。


愛晶は、


―……廉海を失った悲しみを、その日、初めて口から零した。


どこかで耐えていたものを、声に乗せて。


上を見上げて、見境なく泣き喚く愛晶を、莉玲はただ抱き締めておいてくれた。


彼女の、他人の痛みでさえも自分のものにしてしまうような、お人好しでお節介で、いろんな人に疎まれながらも、それに気づくことも無く、誰にでも優しかった莉玲は祥星様の寵愛を受けることが出来、子を授かった。


当時、後宮には第一皇子をはじめとして、第一皇女、第二皇女しかいなかったから、誰もが莉玲を警戒した。


そして、産み月を迎える少し前に、


『愛晶、私に何かあったら、この子を守って』


そう、言われた。


彼女までもが、愛晶の前から去ってしまう。


考えたくなかったけれど、後宮では当然のように行われる行為で、彼女自身もそれを分かってた。