【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




当時、愛晶は十九だった。


その時、後宮内で寵愛が最も深かったのは、変わらず、愛晶と同じ歳の柳翠蘭だった。


けれども、彼女は子を授かることは無かった。


風の噂によると、二人は寝所に入っても、お互いに政や兵法書のことについて盛り上がり、話し込んでしまうらしい。


女と戯れるよりも、そういうことを好んだ祥星様が翠蘭様を求めるのは当然のことであって、それを羨ましいと思ったり、奪いたいと思ったことなど、愛晶にはなかった。


廉海にだけ、愛されていればよかった。


祥星様は優しい方だとは思ったけれど、寵愛されたいとか、そんなことは思ったこともなかった。


日に日に、傷が増えていく―……復讐を、考えなかったわけじゃない。


でも、そんなことを後宮内から出来るほど、愛晶には武器がなかった。


無さすぎたのだ。


祥星様の子がいるわけでもなく、だからといって、既に生まれていた唯一の第一皇子を手にかけられる訳でもない。


例え、その生母が罪人として、冷宮に入れられていたとしても、子供を自分の身勝手に巻き込むことはもう、御免だった。


それなら、早く死んでしまおう―……廉海の元へ行って、謝ろう……そう思った、愛晶が二十四のとき。